【日文文法】「は」跟「が」的用法㉔(文章分析1)
今回から日本人の書いた文章を使って具体的に「は」と「が」の使い方を説明します。まずは以下の文章を読み、( )に「は」と「が」のいずれを使うか判断してみてください。
60代の主婦です。先日、夫から突然離婚を切り出されました。
理由を聞くと「A子のこと( )好きになった。異動してから悩んでいること( )多くて、相談を持ちかけられたり、食事に誘ったら来てくれたりする。下ネタを言ってみても照れたりするから多分脈アリだ」とのことでした。
たしかに夫とA子( )2人で食事に行っていること( )知っていました。しかし、それを許可していたの( )夫( )「A子から相談したいこと( )あると言われたから話を聞いてくる」と言っていたからです。夫( )話を聞くことで少しでもA子( )楽になるならという思いでした。
実際はこちら。
60代の主婦です。先日、夫から突然離婚を切り出されました。
理由を聞くと「A子のこと(が)好きになった。異動してから悩んでいること(が)多くて、相談を持ちかけられたり、食事に誘ったら来てくれたりする。下ネタを言ってみても照れたりするから多分脈アリだ」とのことでした。
たしかに夫とA子(が)2人で食事に行っていること(は)知っていました。しかし、それを許可していたの(は)夫(が)「A子から相談したいこと(が)あると言われたから話を聞いてくる」と言っていたからです。夫(が)話を聞くことで少しでもA子(が)楽になるならという思いでした。
以下で理由を説明していきます。
(1)A子のことが好きになった。
これは「(僕は)A子のことが好きになった」の構造。「が」は述語「好き」の対象を表す。強調の意味なし。対比の意味もないため「が」を使う。
(2)異動してから悩んでいることが多くて、
これは「(A子は)異動してから悩んでいることが多くて」の構造。構造的には「台湾は夜市が多い」と同じ「AはBが多い」文型。強調の意味なし。対比の意味もないため「が」を使う。
(3)夫とA子が2人で食事に行っていることは知っていました。
これは「(私は)夫とA子が2人で食事に行っていることは知っていました。」の構造。より詳細な構造は以下の通り。
(私は)【夫とA子が2人で食事に行っていること】は知っていました。
述語「知っていました」の対象が【夫とA子が2人で食事に行っていること】で、これは「こと」従属節であるため、下線部では「が」を使う。
また、後半の「は」は対比(部分肯定)の「は」。述語「知っていました」の対象は通常「を」で表すが、ここは意味的に以下のような対比関係になっているため「は」を使う。
(私は)【夫とA子が2人で食事に行っていること】は知っていましたが、
(私は)【夫とA子がそれほど親密な関係になっていること】は知りませんでした。
(4)それを許可していたのは夫が「A子から相談したいことがあると言われたから話を聞いてくる」と言っていたからです。
これは以下の構造。
【(私が)それを許可していたの】は【夫が「A子から相談したいことがあると言われたから話を聞いてくる」と言っていたから】です。
これは典型的な「Aが~のはBが~からです」の文型。「は」は主題を表す。主題である【(私が)それを許可していたの】は「の」従属節なので下線部は「が」を使う。
また、後半も「から」従属節なので下線部では主語「夫」の後ろは「が」を使う。
なお、「A子から相談したいことがあると言われたから話を聞いてくる」は以下の通り、二重引用句の構造。「 」は夫の発言内容、『 』はA子の発言内容。
「(僕は)A子から『(私はあなたに)相談したいことがある』と言われたから、(僕はA子の)話を聞いてくる」
『(私はあなたに)相談したいことがある』は『私は【あなたに相談したいこと】がある』の構造。「が」は述語「ある」の対象を表す。強調の意味なし。対比の意味もないため「が」を使う。
(5)夫が話を聞くことで少しでもA子が楽になるならという思いでした。
これは以下の構造。「私は~という思いでした。」が中心の骨格。
(私は)【夫が話を聞くことで少しでもA子が楽になるなら(、私は気にしない)という思い】でした。
下線部の「夫が話を聞くことで少しでもA子が楽になるなら、私は気にしない。」の前文は条件の「なら」従属節。「なら」従属節では「が」を使う。部分的には夫が話を聞くことは「こと」従属節なので「が」を使うとも言える。
今回の全文はこちら
https://komachi.yomiuri.co.jp/topics/id/1046071/